(相談者さん)先日、IDECOについて教えてもらいましたが、フリーランスだと小規模企業共済もいいって聞きました。どちらがいいんでしょう?
前回のIDECOのお話はこちら
(CPAみゆき)そうですね。どちらも大きく節税できるという意味では同じですが、IDECOは自分で運用方法を決められるので、運用益を狙うならIDECO、堅実に増やしたいなら小規模企業共済。また、その人の置かれている状況(何年払い込むかなど)によっても変わってきます。実は一番いいのは、両方加入すること。併用可能なんです。
(CPAみゆき)小規模企業共済がどんなものか、メリットやデメリットについてお話していきますね。
小規模企業共済って?
国の機関である中小機構が運営する退職金制度です。
小規模企業の経営者や役員、個人事業主が加入※できます。
※加入資格があり、必ずしもすべての方が加入できるわけではありません。加入資格はこちら
掛金月額は、1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できます。
掛金は全額を所得控除できるので、高い節税効果があります。
詳しくは、中小機構のホームページをぜひご覧ください。
何でお得なの?
お得ポイントは大きく次の3つです。
①節税額が大きい
掛け金を払うと全額が所得額から控除されるのですが、これによる節税額がめちゃめちゃ大きいのです。
課税所得が400万円で、満額の7万円(月額)をかけていた場合、節約できる税金は年間で
241,300円
です。もし20年かけたとすると、節税額はなんと
4,826,000円
にもなります。
※課税所得とは、1年の収入から経費を差し引いた総所得金額から、基礎控除、扶養控除、社会保険料控除等を控除した後の額で、課税の対象となる額をいいます。
※税額は平成29年4月1日現在の税率に基づき、所得税は復興特別所得税を含めて計算しています。住民税均等割については、5,000 円としています。
また、退職や廃業をした時に受け取る一時金(分割受取りも可)を所得から控除することができ、受取時の税金も節約できるのです。
ご自身の節税額と将来の受取額は、次のサイトでシミュレーションができるのでやってみてください。
②利率1%の運用益
小規模企業共済は予定利率が1%と設定されています。
そのため、払い込んだ金額よりたくさんの金額が返ってくることになります。
先ほどの満額の7万円(月額)を20年間かけていたケースで考えると、
払込金額は16,800,000円(7万円×12か月✖20年間)ですが、
廃業の場合
19,504,800円 2,704,800円 のお得
65歳で受け取る場合
18,611,600円 1,811,600円 のお得
となります。
IDECOは大きく運用益が見込める代わりに元本割れのリスクがあります。
そのため小規模企業共済は堅実な投資といえます。
ただし20年未満で途中解約した場合は元本割れとなります。
また、インフレーションになった場合にはインフレリスク(受取額の目減り)がありますのでご注意ください。
③低金利の貸付制度
掛金の範囲内で事業資金の貸付制度が利用できます。
借入事由により金利が設定されており、比較的低利な金利となっています。
これはIDECOにはないメリットで、個人事業者の方にとっては心強い制度と言えます。
掛け金と受取額の注意点
①掛け金額
1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択できます。
自営業には退職金がありません。
将来の引退に備え、最大限準備しておきたいものです。
ただし、最優先で支払わないといけないのは国民年金、健康保険などの社会保険です。
まずは社会保険を支払った上で、どのくらいの掛け金なら支払えそうか、将来の引退時にどのくらい欲しいかを試算してみてください。
冒頭でお話したように、IDECOとの併用も可能なので、併せて検討することをお勧めします。
また、共済の最大のメリットは節税ですので、可能な限り掛け金を支払い節税メリットを享受することをお勧めしますが、課税所得が少ない場合はそこまでの節税メリットが受けられない場合があります。
シミュレーションツールも用いて、十分検討してください。
なお、途中で掛け金の変更は可能です。
また、掛け金の支払い方法としては月払い、半年払い、年払いがあり、半年払い、年払いの場合、前納月数1ヶ月あたり1,000分の0.9に相当する額が戻ってきてお得です。
②受取額
これがこの小規模企業共済の特徴的なところですが、受取りの請求の理由によって金額が変わってきます。
受取りの請求の理由(事由)には次の4つがあります。
『A共済事由』『B共済事由』『準共済事由』『任意解約』
個人事業主か、法人かでも異なるのですが、個人事業主の場合を例にとると、それぞれ次のようになります。
『A共済事由』・・事業の廃業、死亡の場合
『B共済事由』・・老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上納付)
『準共済事由』・・個人事業を法人成りし、加入資格がなくなり解約
『任意解約』・・任意解約、滞納の場合
そして、中小企業機構で紹介されている受取金額は次のとおりです。
(例)掛金月額1万円で、加入した場合
上表では、任意解約の場合の金額の記載がありませんが、
「掛金納付月数が、240か月(20年)未満で任意解約をした場合は、掛金合計額を下回ります」
との記載があります。
途中解約は得策ではないので、廃業するか、65歳まで待つのがおすすめです。
加入方法
加入するには、中小機構が業務委託契約を結んでいる団体または金融機関の窓口に必要書類を提出する必要があります。
詳しくは、下記のウェブサイトをご覧ください。
いかがでしたでしょうか。
小規模共済の特徴をしっかり把握してうまく活用してくださいね。